世界に共有したい日本発の食のリスト「EARTH FOODS 25」-最終版-
No.14

食の未来をより良くするため 世界に共有したい日本発の食のリスト「EARTH FOODS 25」
「EARTH FOODS 25」とは、日本が培った食材、食品、食の知恵・技術の中から25を選定し、その価値を国内外に発信することで、地球の食の未来をより良くするためのアイデアを共有するためのリストです。
日本の食文化は、「地球との共生」と「食の知恵・技術」の集積です。豊かな海洋国家(海の面積は世界第6位)として、昔から受け継がれてきた「海藻文化」と「発酵文化」があり、そこには多くの知恵や技術の集積があり、菜食・発酵・健康が結びついた食の自然観をもっています。この日本がもつ食の価値・本質を再定義し、世界に共有することで、食文化発展や環境問題解決への貢献につながることを目指しています。
▼EARTH FOODS 25
1. 米粉
2. 餅
3. 豆乳
4. 高野豆腐
5. あんこ
6. 大根
7. わさび
8. 山椒
9. かんぴょう
10. こんにゃく
11. 抹茶
12. 香酸かんきつ
13. 梅干し
14. 椎茸・干し椎茸
15. 昆布
16. わかめ
17. のり
18. 寒天
19. ふぐ
20. すり身
21. 鰹節
22. 麹・種麹
23. 日本酒・本みりん
24. しょうゆ・みそ
25. 野菜の漬物
▼「EARTH FOODS 25」選定理由と伝えたい想い
1 米粉 (農産物、米、加工品)

コメの可能性を広げるライスパウダー
日本の主食である米を粉状にしたもので、エネルギー源となる炭水化物が多く含まれている。餅米から作った米粉、うるち米(米飯用のお米)から作った米粉が古くから和菓子や米菓などに使われてきたが、近年は小麦粉の代用、グルテンフリーの食材としても注目され、多様な使い方・食べ方が広がっている。
2 餅 (農産物、米、加工品)

手軽で消化バツグンのエネルギー保存食
餅米などを蒸して、臼と杵を使って粘り気が出るまでついて作る保存食で、炭水化物が多く、消化がよいため、手軽なエネルギー源となる。祭りのようなハレの日に欠かせない存在で、日常的にも多様な食べ方で楽しまれている。焼く、煮ると柔らかくのびる食感に、揚げるとサクサクとした食感になる。
3 豆乳 (農産物、豆類、加工品)

大豆生まれのプラントベースミルク
大豆が原料のプラントベースミルク。大豆に含まれるたんぱく質のほか、イソフラボン、サポニン、レシチン、ビタミン、ミネラルなど豊富な栄養素を含む。熱を加えることで湯葉を、にがりを加え固めることで豆腐をつくることができる。様々な料理やスイーツに活用されている。
4 高野豆腐 (農産物、豆類、加工品)

軽くて長持ちするフリーズドライトーフ
「凍り豆腐」ともいわれ、豆腐を凍らせたあとに低温熟成し、乾燥させた保存食品。非常に軽く、常温で長く保存が可能。凍らせることで味が染み込みやすく、乾燥させることで水分を含み膨らむので満腹感が得られる。精進料理では植物性原料を使用した肉の代替とされてきたことから、再び脚光を集めている。
5 あんこ (農産物、豆類、加工品)

和菓子から世界へ、期待の小豆ペースト
小豆などを煮詰めて練ったペースト状のもの。小豆は炭水化物やたんぱく質のほか、ミネラルやポリフェノールなどを多く含む。主に和菓子で使われ、季節の行事のほか日常的にも食べられている。油脂を使わない食材として洋風の料理やスイーツなどにも使われるなど利用の可能性が広がっている。
6 大根 (農産物、野菜類)

捨てるところがなさすぎる大きな根菜
日本で古くから親しまれている野菜で、全国各地に辛みや形、大きさの異なる様々なご当地大根がある。根の部分はもちろん皮も葉も茎も捨てるところがない。一年を通して食べられ、生、おろす、煮る、焼く、蒸すなど食べ方も多様。さらに、干す(切干大根)、発酵する(沢庵)ことで保存性の高い食品にもなる。
7 わさび (農産物、野菜類)

ツンとくる辛みと機能性のヒット薬味
鼻にツンとくる辛みなど独特の香辛料として使われる日本固有の植物。食材の生臭さや細菌の増殖を抑えることから寿司や刺身の薬味として定番で、健康や美容にも幅広い効果があるといわれる。近年、海外でもわさびの栽培が増え、日本料理以外でも様々な利用法が生まれている。
8 山椒 (農産物、野菜類)

豊かな香りと爽やかなしびれの和のハーブ
豊かな香りと、辛み、しびれが特徴のミカン科の植物。春は花山椒や木の芽、初夏には実山椒が楽しまれ、夏は乾燥山椒を収穫し、粉状に加工すると粉山椒になる。減塩を可能にする効果、身体を芯から温める効果がある。近年海外で「和のハーブ&スパイス」「ジャパニーズペッパー」として人気が高まっている。
9 かんぴょう (農産物、野菜類、加工品)

ふしぎな食感のひも状乾燥食品
ユウガオの果肉を薄く細長くむいて乾燥させたもの。カルシウム、カリウム、リン、鉄分が多く、特に食物繊維が豊富。主に巻き寿司の具として使われるが、味にクセがないため和・洋・中何にでも使うことができ、出汁にも具材にもなる。独特の食感が好まれ、ヴィーガン料理にも取り入れやすい。
10 こんにゃく (農産物、いも類、加工品)

イモから生まれた満腹ぷるぷる食品
こんにゃく芋から作られる、ぷるぷるした食感が特徴の食品。97%が水分で、食物繊維であるグルコマンナンのほか、一般的にカルシウムを多く含む。低カロリー低糖質で満腹感を得やすい。糸こんにゃくやしらたきは、おでんやすき焼きといった従来の食べ方のほか、グルテンフリーな麺としての使い方も広がっている。
11 抹茶 (農産物、茶類、加工品)

健康成分まるごといただくパウダー緑茶
日光を遮って摘み採り、揉まずに乾燥した茶葉を微粉状に加工したもの。茶葉そのものをお湯に混ぜて飲むため、カテキンやテアニン、カフェインの含有量は煎茶よりも遥かに多い。栄養面だけではなく、禅や茶の湯文化と結びついた文化的・精神的価値もあることから、海外での活用の幅も広がっている。
12 香酸かんきつ (農産物、果実類)

果汁と果皮が活躍する名脇役フルーツ
果肉を食べず果汁の酸味や果皮の香りを楽しむ「香酸かんきつ」が日本には数多くあり、料理を際立たせる名脇役として定番。すでに海外でも人気のゆずのほか、橙やかぼず、すだちなどが代表的。昔から変質しやすい動物性たんぱくの食中毒を予防し、保存性を高める役目を果たしてきた。
13 梅干し (農産物、果実類、加工品)

梅と塩だけでつくる酸っぱい保存食
梅の実と塩だけで漬けた、酸味が特徴の日本の食文化に欠かせない漬物。古くから食中毒を予防するとされ、さらにクエン酸は疲労回復、酸味は食欲増進にもつながる。保存がきき、抗酸化作用が高い。その酸っぱさから海外では敬遠されがちだったが、最近の日本食ブームや健康志向の影響で注目度が高まっている。
14 椎茸・干し椎茸 (農産物、きのこ類)

食べかたマルチ、干せばうま味ブースト
ブナ科の枯れ木に生える日本を代表するきのこ。低カロリーで食物繊維、ビタミンDが豊富で、焼く、煮る、揚げるなど多様な調理法がある。干すことで生よりもうま味成分のグアニル酸が多く含まれ、出汁の素になる。さらに他のうま味成分グルタミン酸と組み合わせると相乗効果を生む「うま味ブースター」となる。
15 昆布 (水産物、海藻類)

うま味と栄養豊富たっぷり、縁起のよい海藻
真昆布、羅臼昆布、利尻昆布などの種類があり、加工品も塩昆布やおぼろ昆布、とろろ昆布、佃煮など多種多様。食物繊維やミネラルが豊富で、うま味成分であるグルタミン酸を多く含むことから出汁の素になる。「喜ぶ」に音が近いことから縁起物とされる。日本で採れる9割以上は北海道であり、大阪がその発展に寄与した。
16 わかめ (水産物、海藻類)

身近で万能なシーベジタブルの代表選手
葉体、茎、芽株と部位によって食感や味わいが異なり、ほぼすべて食べることができる褐藻類の海藻。ミネラルや食物繊維が豊富で、塩蔵や乾燥することで長期保存が可能。汁もの、サラダ、和え物、酢の物、煮物、炒め物、スープなど用途は多種多様。海に生えるわかめは褐色だが、湯通しすることで鮮やかな緑色に変化する。
17 のり (水産物、海藻類、加工品)

巻く、はさむ、ふりかける、乾燥海藻
主に紅藻類を加工した乾燥食品。海藻の中でも特にたんぱく質が豊富でその含有率は約4割にものぼる他、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の“三大うま味成分”を含んでいる。おにぎりや寿司など米飯と共に食べることが多いが、それ以外にもスープやサラダ、パスタといった多様な料理にも活用されている。
18 寒天 (水産物、海藻類、加工品)

演出上手な海藻由来のノンカロリー食材
海藻のテングサなどを煮出した液を冷やし固めてつくる「ところてん」を凍結・乾燥させたもの。冷やすと固まる力はゼリーや羊羹、プリンなどの原料に、低カロリーで食物繊維が豊富なためダイエット食品に、とろみは介護食などに活用。さらに現代は食物繊維の食感をつくる機能が代替肉の食感や肉汁感の表現に役立っている。
19 ふぐ (水産物、魚類)

日本の高級魚、世界の未利用魚
日本では、美味な高級魚として愛されている。薄づくりの刺身や鍋物、焼き物、から揚げ、ヒレ酒など楽しみ方は多様。毒を持つため、調理する際は有毒部位を処理・除毒する特別な免許が必要。世界的には毒魚として知られ未利用魚となっているが、養殖しやすく世界中に生息するため、ふぐ食の国際化が期待される。
20 すり身 (水産物、魚類、加工品)

変幻自在の魚加工クリエイター
魚の身をすり潰した練りもので、蒸すとかまぼこ、茹でるとはんぺん、焼くとちくわ、揚げるとさつま揚げといった加工食品になる。原料は主にスケトウダラであるが、他の未利用魚や余剰在庫魚も使われる。特にカニカマはイミテーション(模倣品)を超越したおいしい食品として世界で食べられている。
21 鰹節 (水産物、魚類、発酵食品)

カチカチでフワフワ、凝縮された保存魚
かつおの身を煮沸してタンパク質を固めたあと、いぶして乾燥させ水分を減らした状態のもの。保存性が高く、非常に硬いため専用の削り器で削って食べる。うま味成分のイノシン酸が多く、出汁を取るために使われるほか、料理にトッピングして風味やうま味を足す食材として使われるなど日本食には欠かせない食材。
22 麹・種麹 (菌類、発酵食品)

日本がほこる発酵食文化の立役者
温暖多湿な日本の気候風土から生まれ、「国菌」に指定されているカビの一種「麹菌」。麹菌を蒸した米や麦、大豆などに付着させ培養させたものが麹で、麹を造る際に麹菌の種として用いられるのが種麹。日本酒やみそ、しょうゆ、みりん、酢など日本で使われている発酵食品はほとんどが麹を使ったもの。近年、海外でも様々な料理に麹が利用されている。
23 日本酒・本みりん (農産物、米、発酵食品)

飲んで美味、料理を引き立てる米発酵調味料
古くから神事などで使われてきた日本酒は、米・米麹・水を原料に発酵させた醸造酒。調味料として使うと素材の臭みを取り除き、隠し味やうま味がプラスされる。本みりんは餅米・米麹・焼酎を原料に糖化・熟成させた調味料で、甘味をつけることができるほか、食材の表面にテリとツヤをつけることができる。
24 しょうゆ・みそ (農産物、豆など、発酵食品)

日本の食に欠かせない、大豆発酵調味料
大豆、塩などを原料とし、麹や酵母、乳酸菌によって発酵・熟成させてつくる日本古来からの発酵調味料。大豆由来のアミノ酸、うま味成分でもあるグルタミン酸が豊富で、魚などの生臭さを消してくれる。近年はパウダー、ペーパー、ムースなど様々な形態の商品も増え、海外での活用も広がっている。
25 野菜の漬物 (農産物、野菜類、発酵食品)

栄養と味わいが大凝縮する野菜のおかず
様々な野菜を塩で漬けこみ、保存性を高めた漬物。秋に収穫した野菜を保存し、冬を乗り越えるための知恵として発達。しょうゆ、みそ、酢、麹、米ぬか、酒粕などに漬けこむことで味や風味を増したり、発酵が進むことで乳酸菌が育成しうま味が加わる。近年は減塩のもの、惣菜感覚の浅漬けも広まった。
【補足:海藻類(15~18)に関して】
海藻類は二酸化炭素を吸収する優秀な海洋植物として、国連環境計画(UNEP)の2009年の報告書で「ブルーカーボン」と命名され、世界的に注目された。海外ではこれまで、「シーウィード(海の雑草)」と呼んでいたが、近年、「シーベジタブル(海の野菜)」として積極的に摂取しはじめている。日本の海域には1500種類もの海藻があり、海藻の多様な食べ方や調理法、アイデアが蓄積されており、海藻の活用によるより持続可能な未来を築くための一翼を日本が担っている。
▼EARTH FOODS選定における「10の視点」
栄養的な視点 : 栄養価が高い、健康に必要な栄養素が含まれている
環境配慮の視点: 地球環境に悪影響を与えない、良い影響を与える
持続性の視点 : 安定供給できる、未利用食材を有効活用でできる
多様性の視点 : 食べる人を選ばない、多様な料理に使用できる
倫理的な視点 : ヒトや動物等の身体的・心理状態への配慮(アニマルウェルフェア、フェアトレードなど)
経済的な視点 : 比較的入手しやすい、コスト負担が少ない
嗜好的な視点 : 食べておいしい、料理をおいしくする
文化的な視点 : 日本の歴史、伝統、食文化に根差している
汎用性の視点 : 食べ方にバリエーションがあり、料理に使いやすくアレンジしやすい
情緒的な視点 : 食べる人の気持ちを豊かにする
▼EARTH FOODS 検討委員会のご紹介

「EARTH FOODS検討委員会」として、食業界の第一線で活躍されている有識者の皆様をアドバイザリーボードとして迎え、選定についての協議・検討を重ねてまいりました。
(以下敬称略)
小泉 武夫(農学博士、東京農業大学名誉教授)
村田 吉弘(菊乃井 三代目主人)
門上 武司(フードコラムニスト、「あまから手帖」編集顧問)
辻 芳樹(辻調理師専門学校校長、辻調グループ代表)
外村 仁(Food Tech Studio - Bites!ファウンダー、元Apple マーケティング本部長)
野村 友里(eatrip 主宰/料理人)
石川 伸一(宮城大学食産業学群 教授「EARTH MART」アドバイザー)
大屋 洋子(食生活ラボ 顧問・研究主幹)
小山 薫堂(大阪・関西万博テーマ事業「EARTH MART」総合プロデューサー)